子育てとボーカルレッスン。
どちらも大好きだから全力で頑張れます。
ボーカル講師
郡 由美
私は音楽大学の声楽科に在籍していた頃から「音楽で食べて行く」ことを目標に、教員免許を取得したり音楽教室でのアルバイトなどをしていました。学生時代、そして、結婚・出産を経て、今は一児の母として講師業(ボイストレーナー)を続けているわけですが、子育てと同じく「人を育てる」という点には大きなやりがいを感じます。歌が苦手とおっしゃっていた方が、今ではカラオケを楽しむようになったり。70歳を過ぎた生徒さんの成長に、私自身も刺激をいただいたり。「対・人間」の仕事だからこそ感じられる喜びが、ボイストレーナーにはあると思います。
私が担当している生徒さんは、いまワークショップを含めて50名ほどいらっしゃるでしょうか。ほとんどの生徒さんがミュージカル曲を歌われているのですが、たとえジャンルは同じでも生徒さんの年齢や性別、目標とするものは人それぞれ。一人ひとりのニーズにお応えするべくボーカルレッスンのカリキュラムを考えることが、いちばん苦労する作業かも知れませんね。月に2回のレッスンにいらっしゃる生徒さんたちは、きっとご自分のお友達より多く私と会ってくださっているはず(笑)。私は生徒さんの声を聞けば、その日の健康状態や気分まで分かってしまいます(笑)。そんな生徒さんたちが心を解放して気持ち良く歌えるように、みなさんに満足していただけるレッスンにしよう、と考えながら仕事をしています。
妊娠中は酷いつわりに苦しめられて8キロも痩せてしまったほどで、破水からはじまった出産も3日がかりのそれは大変なものでした(苦笑)。出産を終えてベッドの上で目覚めたときには主人や両親たちが私を取り囲んでいましたから、本当に命の危険があったのかもしれません(笑)。それほどの経験をして息子と一緒の生活がはじまったのですが、やはり歌の仕事から離れることはできなくて。息子が一歳のお誕生日を迎えるのとほぼ同時に、ボイストレーナーとして仕事をはじめました。
当時のモア東京ボーカル教室はまだ立ち上げたばかりで、今では4つある教室も浦安に1校あるだけでした。仕事をはじめる以前にまず私がしなければならなかったのは息子の保育園探し。校長自ら浦安校周辺の保育施設をリストアップして渡してくださったおかげで息子を預ける場所が見つかりホッとしたのも束の間、夜9時のお迎えに合わせて保育所までダッシュする日々がはじまりました(笑)。最後の生徒さんのお見送りをするとすぐに保育所まで走り、どうしても間に合わない時には私に代わって校長がお迎えに行ってくださったりして。保育所の方はきっと、校長のことを息子のパパだと思っていたかもしれませんね(笑)。
その後息子は幼稚園から小学校へ進み、子育てのスタイルも徐々に変わりつつありますが、私がいつも心に留めているのは、「目の前のことに全力で取り組む」こと。家に帰れば子供と、ボーカルレッスンでは生徒さんとしっかり向き合い、私がもてる100%の力を注ぎたいと思っています。3歳からバイオリンを始めた息子はジュニアオーケストラに参加するまでになり、私の仕事についても理解して応援してくれています。かわいい息子と音楽を通してコミュニケーションできるのは、とても楽しく幸せなことですね(笑)。
「歌うこと」を頑張ってきた自分の経験をいかせるのがボイストレーナーの仕事。声を出すための技術であったり、体のメンテナンスであったり、これまでに身につけた全てが、この仕事をする上での強みになるのです。ただし、生徒さんをご指導するためには「忍耐力」も必要です(笑)。スイッチを切り替えるように一瞬で上手く歌えるようにはなりませんから、生徒さんそれぞれのペースにあわせてレッスンを進めて行くことが大切になってきます。舞台やミュージカルのオーディションを受けた経験、ボイストレーニングを受けたり・教えたりした経験など。さまざまな経験から得たものを分かりやすくお伝えする力があれば、モア東京ボーカル教室のボイストレーナーとして活躍していただけるのではないでしょうか。
生徒さんを指導するボイストレーナーに魅力あふれる人が多いという点が、そのままモア東京ボーカル教室の魅力につながっていると思います。クラシック、ポップス、ミュージカルなど、さまざまなジャンルを得意とするボイストレーナーが在籍していますが、誰もが技術面・人間性ともに素晴らしい方ばかりです。一方の生徒さんについては、本当にいろいろな方がいらっしゃいます。ふつう音楽教室に通われる方は、もともと歌が好きだったり得意だったりする場合が多いんですよね。でもモア東京ボーカル教室の生徒さんはカラオケが趣味という方、プロの舞台を目指している方などさまざまで、中には自分は音痴だからと悩んでいたり、声そのものにコンプレックスを抱えている方もいらっしゃいます。歌うのが怖いと感じてしまう方たちが楽しく歌えるように、生徒さんのコンプレックス克服をサポートできることもモア東京ボーカル教室ならではだと思います。
「声」は人の体の中から生まれる楽器。ですから私は、一人ひとり異なる楽器の良さを引き出してあげたいと考えながらレッスンをしています。ピアノやバイオリンといった楽器の音色は耳で聞くことが出来ますよね。でも、「自分の声」という楽器だけは自分自身で正確に聞きとることが出来ません。それだけに生徒さんは、今の自分がどれくらい歌えているのか? あとどのくらいで上手に歌えるのだろうか? と不安に感じてしまうこともあるんですよね。そんなとき私は、「今はこの辺りを歩いていますよ」「これからこうして行きましょう」とお話をすることで、生徒さんたちの不安を取り除くようにしています。それぞれの生徒さんの気持ちに寄り添った指導をするなかで、たしかな信頼関係を築いて行きたいですね。
私はモア東京ボーカル教室の立ち上げの頃を知っていますので、オーナーや校長がご自分たちで教室の床にカーペットを貼っていた姿もよく覚えています(笑)。ですから私の中にオーナー側・ボイストレーナー側といった隔たりはなく、「何でも一緒にやろう」という感覚で仕事をしています。年に数回のペースで面談の場を設けていただけますし、こちらからの要望もお伝えしやすい環境だと思います。他のボイストレーナーの方とは、生徒さんの引き継ぎなどを連絡し合うことがあります。もちろん生徒さんの情報は個人ファイルに記入してお渡しするのですが、その方の人柄やレッスン中に注意するポイントなどはメールでやり取りすることも多いですね。
私はマンツーマンのボーカルレッスンのほかに、4つある教室の垣根をこえて参加できるミュージカルのワークショップを指導しています。「浦安ミュージカル」と呼ばれるミュージカルサークルには現在20名ほどの生徒さんが在籍していて、月に2回のペースで稽古を行いながら年に一度の発表の場に向けてみんなで舞台を作り上げて行きます。一年のうち最初の数ヵ月はミュージカルの基礎をワークショップ形式で行い、演目と配役が決定したら本格的な稽古がスタートするのですが、今はちょうどこのタイミング。私はようやく台本を書き上げて、無事にメンバーのキャスティングも終えたところです(笑)。
実は次回作に選んだのは、私をこの世界へと導いてくれた『オペラ座の怪人』。主人公・ファントムの人生を探ろうと原作を読み直してみましたが…、これがドツボにはまったと言いますか(笑)。ただ怖いだけでない、人間としての彼の心理を私なりに表現したいと考えてとても苦労しました(涙)。それでも今は、舞台のどこからファントムを登場させようかと考えてワクワクしているんです(笑)。大小さまざまな会場にあわせて遊びゴコロあふれる演出を考える時間は、毎回とても楽しいんですよ。
一方ワークショップを運営する上では、生徒さんのキャスティングも大切な要素になります。私はメンバー一人ひとりに対して毎年新たな課題を設定し、それをクリア出来るような役を選んで演じてもらうようにしています。たとえば次回作の『オペラ座の怪人』では、女性メンバーのほとんどがクリスティーヌ役を目指していました。オーディションを終えて役を外れたメンバーから「なぜ自分は希望する役を演じられないのか?」と言う質問を受けることもありましたが、私はしっかりとメンバーたちの感情に向き合って話をしてきていると思います。メンバーに期待していること・自分の経験をお伝えすることで、一人ひとりの成長をしっかりサポートして行きたいですね。